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通勤電車の中で「ヴァルザーの詩と小品」を読み終えました。 [本を読んでいる]

先日、通勤電車の中で、スイスの作家であるロベルト・ヴァルザー(Robert Walser 1878~1956年)の作品を集めた「ヴァルザーの詩と小品」を読み終えました。この本は、

20世紀文学において特異な位置を占めるスイスの作家ヴァルザーは、ベンヤミンが、ブランショが高く評価しながらも、再発見はカフカよりずっと遅れた。カフカの「天井桟敷で」のもとになった散文小品「喝采」をはじめ、兄カールの挿絵全点を収めた『詩篇』の全訳、やはりカールのおそろしく現代的な絵に付された小品などの初訳を含む、ベスト版一巻選集。(以上、「みすず書房」HP 本書紹介文からの引用です)

とのことです。

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「ヴァルザーの詩と小品」(みすず書房)。また本書に収められている兄のカール・ヴァルザーによる挿絵はとても魅力的なものです。

ロベルト・オットー・ヴァルザーはスイスのベルン州ビールに生まれる。兄5人、姉1人、妹1人という子沢山の家庭で、兄の1人カールは後に画家として成功し、弟ロベルトの著作にも挿絵を寄せている。学費が続かなかったことから中学を中退し、銀行員や保険会社に勤めた後に詩作品の発表を始め、リヒャルト・デーメルやヴェーデキントらと交友を持った。作品の大部分は小説とも随筆とも言い難い散文小品(Prosastück)からなり、屋外の情景や日々の物思いを綴り新聞や雑誌に掲載されたのち、幾つもの本にまとめられた。5歳年少のフランツ・カフカは彼の愛読者の1人であった。晩年は幻聴を聴くようになるなど精神を病み、スイスの療養所で20年以上作品を発表することなく暮らしていた。病院の近くの雪山を散策中、心臓発作を起こして急死。(以上「Wikipedia」ロベルト・ヴァルザーの解説文からの引用。一部省略しています)

私は最近、アメリカの作家、レナード・ハント(Laird Hunt 1968年~)の小説を読み、その際に訳者の柴田元幸氏が、レナード・ハントはドイツの作家であるW.G.ゼーバルト(W・G・Sebald 1944~2001年)の影響を強く受けていると紹介していたことから、ゼーバルトのことを何となくネットで調べていたところ、今度はゼーバルトがロベルト・ヴァルザーの熱心な読者であることを知って興味を持ち、本書を図書館から借りてきたものです。結果的にレナード・ハント、W.G.ゼーバルト、ロベルト・ヴァルザーという、国を跨いだ三人の作家の文学的なつながり、関係性を追っていったということになります。

ロベルト・ヴァルザーの本の印象を一言でいえば、「後期ロマン派作家の魂の漂泊」ともいうべきもので、まさしくそれは「孤独な散歩者の夢想」です。書かれている内容は、とても繊細かつロマンティックでありながら、その裏に一ひねりした、屈折した作者の心情がみてとれます、それは「自己」への憐憫と卑下であり、また、彼の作品には、彼が創作した時代、すなわち大戦前のヨーロッパ、の雰囲気、情緒を強く感じることができます。

「魂の漂泊」は、この時代の芸術家の個性というか特徴ではないかと感じます。ゼーバルトが惹かれたのもまさしくこれではないかと思います。作家とはじめ、芸術家は魂が無垢であればあるこそ、漂泊するのでしょう。ロベルト・ヴァルザーの作品を読んでいると、彼の無垢さと感受性の豊かさを感じます。

私は今回、初めてロベルト・ヴァルザーを知りました。こんな素晴らしい作家のことを、これまで知らなかったなんてと自身の無知を恥じた次第です。これから、またチャンスを見つけて、今度は彼の小説(集英社の「世界文学全集 ベラージュ74」と鳥影社「ローベルト・ヴァルザー作品集3」に所収されている「ヤーコプ・フォン・グンテン」)を読んでみたいと思います。今回、とても充実した読書体験を得ることができました。うまく説明できないのですが、この本は私になにか、とても大きな影響を与えたような気がしてなりません。

ちなみに、私が以前、レナード・ハントとゼーバルトの本について書いた記事はこちらです。もし、良かったら読んでみて下さい。

「実家からの帰りの機内でレアード・ハントの「インディアナ、インディアナ」を読み終えました」
 →http://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2017-05-30
「会社へ向かう通勤電車の中で、レアード・ハントの「優しい鬼」を読み終えました」
 →http://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25
「W.G.ゼーバルトの「アウステルリッツ」を読み終えました」
 →http://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2014-05-20

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こちらは兄カール・ヴァルザーの書いた油絵。ちなみに彼は1908年にドイツ人作家ベルンハルト・ケラーマンと日本を訪れ、何枚かの絵を遺しています。


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